日本の漫画から考察するCXデザインの構造 | 鳥山明とディズニーの違い
更新日:6月16日
ディズニーとの違いから考える、感動設計の話
鳥山明さんの漫画を読んでいると、いつも不思議に思うことがあります。
絵は止まっているはずなのに、なぜか頭の中ではものすごいスピードで動いている。
キャラクターが飛ぶ、殴る、かわす、吹き飛ぶ。
その一連の動きが、まるでアニメーションを見ているように自然に再生される。
子どもの頃は、ただ「かっこいい」「読みやすい」と思っていました。
でも、テーマパークやCXデザイン、ブランド体験の仕事をしてきた今あらためて見ると、そこにはとても緻密な“体験設計”があるように感じます。
今回は、鳥山明さんの漫画表現を、ディズニーとの違いも踏まえながら、少しSTAGEらしく読み解いてみたいと思います。
1. ディズニーと鳥山明さんのあいだにあるもの
僕はこう見ています。鳥山明さんの表現には、ディズニー的なデフォルメやキャラクター造形の影響を感じる部分が確かにあります。
丸みのあるキャラクター、親しみやすい造形、見た瞬間に意味が伝わるシンプルさ。
これは、ディズニーが長年培ってきた「誰にでも伝わる視覚言語」との接点があるからです。
ただし、鳥山明さんはそれをそのまま模倣したわけではありません。
ディズニーはアニメーションとして「なめらかな動き」を設計しました。
一方で鳥山明さんは、漫画という静止画の中で、読者の脳内に動きを生み出したのです。
この違いは非常に面白い。
ディズニーは、動く絵で感情を生み出した。
鳥山明さんは、止まっている絵で動きを想像させた。
この違いを読み解くと、エンターテイメントが人の心を動かす構造が見えてきます。
2. 鳥山明さんの絵は、なぜこんなに読みやすいのか
あらためて考えると、鳥山明さんの漫画はとにかく読みやすい。
何が起きているのか。
誰がどこにいるのか。
次に何が起きそうなのか。
読者が迷わない。
これは簡単なことのようで、実はとても高度な技術だと思います。
漫画は、ページの上に絵と言葉が並んでいるだけです。
でも、そこに視線の流れ、時間の流れ、感情の流れが設計されていると、読者は無意識のうちに物語へ引き込まれていきます。
鳥山明さんの作品には、その流れがとても自然にあります。
これは、テーマパークの導線設計や、店舗体験、WebサイトのUX、イベント体験にも通じます。
どこを見て、何を感じ、次に何を期待するか。
優れた体験には、必ず視線と時間の設計があります。
3. 背景を描かない勇気
鳥山明さんの作品では、背景がかなりシンプルに描かれている場面があります。
白い余白が多かったり、荒野や空のように情報量の少ない背景が使われたりする。
一見すると、これは省力化のようにも見えます。
でも、体験設計の視点で見ると、これはとても合理的な「引き算」だと思います。
背景情報を減らすことで、読者の視線はキャラクターとアクションに集中します。
何を見るべきかが明確になる。
ノイズが減る。
結果として、動きや感情がより強く伝わる。
これはブランドやサービスにも同じことが言えます。
あれも伝えたい。
これも見せたい。
全部盛り込みたい。
でも、情報が多すぎると、人はかえって何も受け取れなくなります。
本当に大事なのは、何を見せるかだけではなく、何を見せないか。
鳥山明さんの漫画には、その「引き算の強さ」があります。

4. コマ割りは、カスタマージャーニーである
漫画のコマ割りは、読者の体験時間を設計する仕組みです。
大きなコマでは、読者の視線が止まる。
小さなコマが続くと、テンポが速くなる。
視点が切り替わると、空間の広がりが生まれる。
余白があると、読者はその間を想像する。
これは、まさにカスタマージャーニーです。
テーマパークで言えば、入口からアトラクションまでの期待感。
店舗で言えば、入店してから商品を手に取るまでの流れ。
観光地で言えば、到着、回遊、発見、余韻の設計。
ウェルネス施設で言えば、受付、香り、音、施術、余韻までの時間設計。
すべては、体験する人の視線と感情をどう運ぶかという話です。
鳥山明さんの漫画は、その誘導がとても上手い。
だから読者はストレスなく読み進められるし、気づいたら物語の中に入り込んでいる。
5. 鳥山メカが「本当にありそう」に見える理由
鳥山明さんのメカデザインも、本当にすごいと思います。
空想の乗り物や機械なのに、どこか本当に動きそうに見える。
ただの飾りではなく、エンジン、ダクト、ボルト、タイヤ、配管などに機能の気配がある。
この「機能がありそう」という感覚が、世界観にリアリティを与えています。
世界観というのは、単に見た目を整えることではありません。
そこに暮らす人がいて、使われている道具があり、修理され、乗りこなされ、時間が積み重なっているように感じられること。
その細部があるから、読者はその世界を信じられる。
これは、ブランドや店舗、観光地にも通じます。
世界観は、装飾ではありません。
細部に理由があること。
機能と美しさが結びついていること。
その場所にしかない空気があること。
そうした積み重ねが、人を没入させるのだと思います。
6. 制約を創造性に変える
鳥山明さんの表現には、週刊連載という過酷な制作環境の中で生まれた合理性もあります。
限られた時間の中で、いかに読みやすく、いかに強い印象を残すか。
すべてを描き込むのではなく、必要なものに集中する。
情報を整理する。
余白を使う。
キャラクターの記号性を高める。
これは、制約を創造性に変える力です。
ビジネスでも同じです。
予算が限られている。
人手が足りない。
時間がない。
場所に制約がある。
でも、その制約があるからこそ、表現が研ぎ澄まされることがあります。
制約は、必ずしも弱点ではありません。
むしろ、設計の方向を明確にしてくれるものでもあります。
7. 編集者との共創に見る、ヒットの構造
鳥山明さんの作品は、作家個人の才能だけで生まれたものではありません。
編集者とのやり取り、読者の反応、市場の変化を受け止めながら進化していった作品でもあります。
ギャグから冒険へ。
冒険からバトルへ。
キャラクターの成長、ライバルの登場、仲間との関係性。
作品は、読者との関係の中で変化していきました。
これは、ブランドや事業開発にも近い話です。
作り手の美意識だけでも足りない。
市場データだけでも足りない。
大事なのは、作り手の世界観と、受け手の反応を往復しながら、体験を進化させていくことです。
ヒットは、完成品として最初から存在するのではなく、関係性の中で育っていくものなのだと思います。

8. 漫画も、テーマパークも、ブランドも、体験設計である
鳥山明さんの漫画から学べることは、漫画の技術だけではありません。
情報を整理すること。
余白をつくること。
視線を誘導すること。
世界観にリアリティを持たせること。
制約を創造性に変えること。
受け手の反応をもとに進化すること。
これらはすべて、体験設計の本質です。
漫画のコマ割りも、テーマパークの導線も、ブランド体験も、観光地の回遊も、ウェルネス施設の時間設計も、根底では同じ問いに向き合っています。
人は、何に心を動かされるのか。
どうすれば、記憶に残るのか。
なぜ、その体験を誰かに語りたくなるのか。
STAGEでは、こうしたエンターテイメントの構造を読み解き、経営、ブランド、地域、CXデザインへと翻訳していきたいと考えています。
9. 結論
鳥山明さんの革新は、絵がうまいことだけにあるのではないと思います。
その本質は、読者にストレスなく情報を届け、想像力を働かせ、世界に没入させるための構造設計にあります。
ディズニーが「動き」を通じて感情を生み出したとすれば、鳥山明さんは「静止画の連続」によって、読者の中に動きを生み出した。
それは、日本漫画が世界共通の視覚言語になっていくうえで、とても重要な転換だったのではないでしょうか。
そして、その技術は漫画だけでなく、あらゆる体験価値の設計に応用できる。
人の心が動く体験は、偶然ではなく設計できる。
鳥山明さんの漫画は、そのことを教えてくれる、最高の教材のひとつだと思います。
体験設計の実践例としてのSTAGEの取り組み
STAGEでは、こうした感動設計の考え方をもとに、地域創生やブランド体験の設計を支援しています。
例えば、地域の観光資源を活かした体験価値の創出や、ウェルネス施設の時間設計、テーマパークの導線設計など、多様なプロジェクトに携わっています。
それぞれの現場で、鳥山明さんの漫画に見られるような「情報設計」「視点誘導」「余白の使い方」「世界観のリアリティ」を意識しながら、体験をデザインしています。
こうした設計は、単なる偶然の感動ではなく、計算された仕組みとして機能します。
もし、ブランドや地域の体験価値を高めたいと考えているなら、ぜひSTAGEの知見を活用してみてください。
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